映画サロン vol.85 「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」(長文注意)東座とえんぱーく

画像ひさしぶりに塩尻の映画館、東座の映画。今回はベルギーとアイルランド合作の映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」。

ここの映画館はほんとにいい。合木さんという映画に詳しいお姉さまがひとりで切り盛りされてる映画館ですが、味のある作品を選んで上映してくれる。最近のシネマコンプレックスでやるようなCGをバンバン使った話題作ではなくて・・・まぁ、それはそれでいいのですが・・・・CGなんか全く使わない、登場人物も少ない、ヒューマンドラマというか・・・映画って本来こういうものじゃないか?っていうような映画を選んでくれています。

だから、根強いファンが映画館に来てくれる・・・シネコンとは全く逆の方向性ですが、そこに映画館の残る道を見出してる気がします。こういう映画館は全国にも広がればいいなと思います。












画像ル・コルビュジエ・・・なんか聞いたことある名前だと思ったら、先日行った上野の国立西洋美術館が、ル・コルビュジエの設計でした。たしか絵を観に行った少し前に世界遺産に登録されましたね。たしかその時にル・コルビュジエのいろんな情報を見たものですから・・・・映画を観ている途中で「あ、あの人か」と気づきました。

ただし、主人公はル・コルビュジエではなくて、アイリーン・グレイ。アイルランド生まれの女性デザイナーで、主にインテリアをデザインしたのだが、建築設計も手がけていた。この映画では、彼女が設計した海辺のヴィラにまつわる、彼女と建築家の巨匠、ル・コルビュジエとの物語である。













画像映画を見始めた頃は、現在のフィクション映画かと思ってましたが、実は時代的には第二次世界大戦前後の話。しかも実話を元にした物語でした。

なので、特別ストーリー的におもしろい・・・ということでもないのですが、主人公、アイリーン・グレイの生き様と、ル・コルビュジエの傍若無人さを描いた感じです。ただ、この二人は特に恋愛関係ではなく・・・アイリーン・グレイにはジャン・バドヴィッチという恋人がいて、彼と住むために作った「E-1027」という海辺のヴィラがあまりにも機能的で、これにル・コルビュジエが嫉妬するという・・・・映画のコピーは「嫉妬か愛憎か」とありますが、恋愛がらみではなく、彼女の才能に対する嫉妬でしょうねぇ。

ちなみにアイリーン・グレイがデザインしたインテリアプロダクツ・・・・イスやテーブル、戸棚とかがかなり高価なものとなっていますが、これ「E-1027」とそのヴィラと同じ番号のテーブルです。今でも1万円くらいでネットで普通に買える。(コピー品のようです。本物は15万円くらいする)もしかしたら持ってるという人もいるかもしれませんし、私もこれ見たことあります。有名でメジャーなガラステーブルですね。

映画の冒頭、アイリーンがかなり高齢になった現代に近い頃にオークションにかけられた彼女がデザインしたイス、「龍の椅子」が28億円で落札されるシーンがあります。彼女のデザインは後世になるにつれ、どんどん評価は高くなります。オートクチュールの走りとでもいいましょうか。










画像これが今回の映画のメインとなる「E-1027」。フランスのコートダジュールの海辺にある別荘ですが・・・これが今から90年も前の1926年に作られたとは・・・今見てもまったく古さを感じさせない。当時としては衝撃だったでしょうね。

これをインテリアデザイナーの女性がデザインしてしまったのだから、巨匠と呼ばれたル・コルビュジエが妬むのも仕方ありません。しばらくはこの建物は、ル・コルビュジエがデザインしたものだと思われていたようです。














画像それもそのはず、その周りにコルビュジエが設計した建物を建ててしまったのである。しかもアイリーンが設計したE-1027は、コルビュジエが実際に住んでいたというのだから驚きである。

映画の中ではアイリーンの恋人バドヴィッチが、浮気をしてアイリーンから離れて行くシーンが描かれているが・・・まぁ結局、男はいつの時代も同じってことで・・・またこの時代は特にそういう時代だったかもしれません。バドウィッチの浮気相手にコルビュジエが手を出した・・・というか、もともとそういう関係だったのではないかと思いますが・・・とにかく実際そうだったのかどうなのか・・・コルビュジエは自由奔放なふるまいと、憮然とした態度で描かれています。

















画像ちなみにこれがル・コルビュジエが設計した上野の国立西洋美術館ね。

彼が提唱する近代建築の五原則 
ピロティ(柱を残して空間をつくる)
屋上庭園
自由な平面
水平連続窓
自由な立面
にのっとった設計となっています。鉄筋コンクリートで構造物を作れるようになったことで確立したんでしょうねぇ。

あれ?そういえば、高松のうちの実家も45年前に作られた当時は珍しかった鉄筋コンクリートの家ですが、コルビュジエの影響を受けてるかも。(笑)あ、屋上庭園、もともとは屋上に上がれなかったのですが、私が中学生くらいの頃に親父に「屋上にのぼれる階段をつけて、土を盛って庭を作れば日当たりもいいし、ながめもいい」と提案して、階段をつけて屋上を利用できるようにしました。私も才能あるかも。

手すりや照明もつけて、ちょっとした屋上テラスになって、バーベキューとかもできますが、階段を上がって準備したり片付けするのが大変なので、今はもうしません。(笑)

たしか親父の話では、当時同い年くらいだった建築設計事務所の人に設計させたと言ってました。私もよく知ってますが、たしか村井さんだったかな。青焼きの設計図面とか見たことあります。1970年代、その頃は鉄筋コンクリートの建物が増える頃でしたねぇ。少し前に香川県庁が丹下健三によって設計されていますが、現在でも残っています。その建物もル・コルビュジエの五原則を取り入れたデザインだそうです。今度、高松に帰った時にもう一度よく見学に行こうっと。

うちの実家、建築途中のまだ2階フロア部分だけまでの時に遊びに行って、この前のいとこ会で一緒に飲んでたあのゴルファー姉妹の姉が階段から落ちる・・・ということもありました。(笑)このゴルファー姉妹の姉は、小学生くらいの時にうちで遊んでて、口にくわえてた10円玉を飲み込んでしまうという「10円玉事件」も起こす、人騒がせな娘でした。

話を戻して・・・コルビュジエの五原則に対して
「家は住むための機械ではない。人間にとっての殻であり、延長であり、解放であり、精神的な発散である。外見上調和がとれているというだけでなく、全体としての構成、個々の作業が一つにあわさって、最も深い意味でその建物を人間的にするのである」というのがアイリーンの考え。コルビュジエの考えを一部否定することに対して、コルビュジエは激怒したようですね。結果、業界から彼女を干そうと圧力をかけたのでしょうね。

それでも結果的にコルビュジエは、アイリーンの設計した海辺のヴィラ「E-1027」に住み、海で泳いで気ままな生活を送ったようですから、口では彼女を否定しつつ、体感では機能的で使いやすい彼女の設計には影響を受けたようです。

コルビュジエもアイリーンも1970年前後に亡くなっていますが、現在につづくデザインに二人の意思は生きているようにも感じられます。













画像しかも今回の映画には、映画の後に講演付き。映画が近代建築の巨匠、ル・コルビュジエを題材とした作品であるので、松本の建築家、山田健一郎さんの建築に関する講演も聞けるという、この講演も含めて映画が1400円は安い。

ちなみに山田健一郎さんは、1963年生まれ・・・ということは、私のひとつ年上。ほぼ同年代の方がいったいどのような話をされるのかも興味があるところでした。コルビュジエがどのような人で、どのようなものを作った人かという説明と、映画の中での彼のふるまいなどの解説。

建築デザイナーと呼ばれる人は、往々にしてろくな人間がいない・・・・都知事に立候補するような・・・と言っていましたから、あぁ、あの人かなと思いました。(笑)山田さん、自分もろくな人間ではないと言っていましたが。

アイリーン・グレイの方の説明では、当時彼女はいろいろな素材を使って、インテリアプロダクツを創っていった・・・その中で日本の漆工芸が積極的に取り入れられて、その関係で日本とも密接なつながりがあったとのお話でした。

山田さんのお話では、コルビュジエの設計よりは、アイリーンの設計の方がこまやかな気配りがあって、使う人の身になって考えられている、例えば窓一つとっても、コルビュジエの方の「水平連続窓」は見た目は美しいけど、換気、通気という面においては何も調整できない。一方、アイリーンの設計では、複数の仕切りがあって、それぞれが開閉できる。気温や風に合わせて調節でき、快適に使えるとのことでした。なるほど、女性的な考え。

この二人の建築デザインの思想は現在でも生かされていて、山田さんが現在手がけている一般住宅にも取り入れてますよ・・・と、いくつか邸宅の写真を見せてくれましたが、いずれも豪邸で・・・・世の中にはそんな家に住んでいる人もいるんだなぁと感心しました。

1時間半ほどでしたが、なかなかおもしろい、興味深い話が聞けてよかったです。業界は違うけど、同年代の人ってこういう仕事をして、こういう発言をするんだなぁと、それもおもしろかったです。


画像劇場に来た人は50から60人ぐらいだったでしょうか。年代はやはり私よりは上の人が大半で・・・・私の行動が年相応じゃないんでしょうか。(笑)


















画像東座、また来月も観に来ましょう。ずっと続けてほしいものです。



















画像さて、今回はその講演会があったために、来場者が多くて駐車場が停められないということだったので、歩いて7、8分の「えんぱーく」の駐車場に車を停めました。塩尻市の市民交流センターです。閉店したイトーヨーカドーの立体駐車場が対面にあって、市営駐車場になっていますが、ここが6時間無料で使えます。

















画像ここ、初めて来ましたが、市の図書館がメインです。本屋さんのような明るい作りで・・・なんかいいですね。

おいしそうな香りもしてきましたが、中にある喫茶店かな?

















画像上のホールでは、囲碁将棋を年配の人と子供たちが行ってるという・・・・なんか楽しそうでしたね。私は囲碁も将棋もやりませんが・・・

老人と子供の交流という感じでした。市の取り組みですかね。大したものです。こういう市の施設っていうのは閑散としているものですが、塩尻の「えんぱーく」は活気があるなぁと感心しました。

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