映画サロン vol.77 「未来よ こんにちは」 (ネタバレ・長文注意)

画像今回の映画サロンは・・・映画も映画なんですが、それよりも映画館の方が面白い。

松本ではなく、塩尻に古い映画館があって、日本全国、どこもシネマコンプレックスに変わりつつある中、家族で経営されているらしい。だからシネマコンプレックスで上映するような映画ではなく、マイナーでも味のある映画をやっている。
















画像土曜日の8時からグッドモーニングショーということで1000円で見られるというのがわかったので、早速行ってみた。

7時半くらいに着いたら、誰もいなくて・・・・あれ?間違ったかな?切符売り場の窓口らしきところもカーテンが閉まってるし・・・・タバコを吸いながらボーッと待ってたら、女性2人が来て

「まだ開いてないんですか?」

「開いてないと思うんですけど・・・・」

と言ってたら、中から女性が出て来て

「映画見られる方ですか?」

「はい」

てっきり入口は閉まってると思ったら開いていて、切符売り場の窓口ではなくて、入口から入ったところでお金を払うシステムでした。(笑)扉を開けておいてほしかったな。

それにしても、なんか懐かしい感じの映画館。私が中学生、高校生の頃に見に行った映画館、そのままのような感じです。よくもまぁ、今でも残ってますね。松本でも20年くらい前にこういう映画館のほとんどは廃業に追い込まれて、もう残っていません。大したもんですね。









画像もしかしたら、私1人じゃないか・・・・と思いましたが、10分前くらいになると急にぞろぞろお客さんが来始めて、30人ぐらいになったかなぁ。びっくりした。

あれ?これってシネコンよりもお客さん多かったりしないか?と思いました。そしたら、どうも1ヶ月に1回変わる映画のちょうど最初の日だったようで、会員になってる人は毎月来ているような感じです。なんと、ほとんどが女性。しかも私よりも年上の人がほとんど。まぁ、少しは若い人もいましたが・・・・・あと男性は夫婦で来ている方と、あともう1人、私よりも年上の男性がいたかなぁ。なんか場違いな気もしましたが、いやいや、私も映画好きの端くれですから、子供の頃から映画見まくってましたし、何も気後れする必要はありません。(笑)

さて、時間になったので開演か・・・と思ったら、先ほどの映画館の女性の方が入って来て、挨拶をして映画の前説を始めました。なんだ?こんな映画館は初めてだぞ?と思いつつ、説明を聞いていました。いやいや、この方もかなりの映画好きで・・・・家族で映画館を切り盛りしている・・・と何かに書いていましたが、この日は1人でやってますので・・・・ということは、切符の販売に、グッズの販売、映写機の操作に、会場の管理、掃除なんかもこの人が1人でやってるんだろうか。そりゃちょっとすごいな・・・・・








画像この映画館、昨年ウッチャンナンチャンのウッチャンが作った映画、「金メダル男」のロケに使われたそうで・・・・映画の舞台も塩尻だったとか。私も見てませんが。ウッチャンのサインが飾ってありました。今度DVD借りて見てみましょう。
関係ないですが・・・・前にも書いたと思いますが、ナンチャン、南原清隆の方は、私の高校の同級生です。高校の頃から変わってないと思います。高校の頃は俺の方が面白かったと思います・・・・それは言い過ぎか?(笑)

さて、本題の映画の話。「未来よ こんにちは」・・・・邦題があまりにベタで・・・・原題は「L'Avenir」・・・アベニールだから、そのまま「未来、将来」ですけど。アベニールっていうと、日産の車を思い出します。それはどうでもいいか。

前説で「男性の方はこの映画を見て、女性の心理を理解してほしい。」と言われて、私は思わず笑ってしまいましたが・・・・まぁ、かかってきなさいって感じで映画を見ました。

舞台はフランス、パリ郊外。主人公はイザベル・ユペール演じるナタリー。50代後半の高校の教師で哲学を教える。夫も同じく哲学の教師で・・・・こういう夫婦ってどうですかね。私生活においてもお互いに哲学で議論し合う・・・・そういう描写もありますが・・・・フランス人の国民性を少し理解する必要がありそうですね。日本人とはかなり違うと思います。

前の会社でフランスの会社と仕事をする機会があって、メールをやりとりし、フランスに出張し、1週間ほど一緒にフランス人と仕事をしました。担当が2人いましたが、まぁ自己主張が強い。それがフランス人のすべてとは思いませんが・・・日本人でもそういう人はいますけど・・・・まぁ、折れなかったですね。

その出張時に1日休暇があって、パリ観光した時にJTBの添乗員さんが一緒で、いろいろフランス人の国民性を話してくれたんですが・・・・やっぱり、はっきりものを言う国民性。革命を起こす、ギロチン台で首を切り落とすような国ですから・・・・・ははは、本当にそうか?(笑)とも思いましたが。本当にそうらしい。日本に旅行に行ったら、おみやげを買ってこないで、箸で料理を食べるようになったことを自慢する、そんな国民性だと言ってました。(笑)

主人公のナタリーが、まぁ気の強そうな、一途な先生で・・・・フランスの高校、学生がストやってます。なんだっけ?先生も学生も校舎に入れないで、何かを訴えてた。日本人なんかこんなこと絶対しないですね。先日、ヒスイ峡で会ったおじさんも言ってた「日本人は本当におとなしい。腐りきった政治なのに、誰も怒ろうともしない。みんなで批判して大統領を辞めさせてしまう韓国人が羨ましいよ。」というのを思い出します。建前が好きで、みんなと同じであることに安心感を覚える付和雷同な国民性の日本人。どうしたもんでしょうかねぇ。あ、俺も日本人か。(笑)

で、哲学の授業ですから・・・・「幸福を手にいれる前が幸福なのです」・・・・おぉ、深い。なるほど。幸福になってしまうと、満たされてしまうからその先がなくなるってことなのか。ということは、幸福の直前でずっと逃してれば、幸福な状態がずっと続くってことじゃないのか?究極の幸福だ。(笑)あれ?それって私?

哲学の授業を屋外でやってるシーンがありました。木陰に生徒たちが寝そべって、哲学の授業をする・・・・いいですねぇ。日本でもそういうことすればいいのに。

画像ナタリーには娘と息子がいて・・・・成人だったかな。別居してて・・・・・ある時、娘がお父さんに告白します。

「お父さん、浮気してるでしょ?」

「え?」

「弟とも話したけど、どちらかはっきり決めてほしい。」

「お母さんは知ってるのか?」

「知らないわよ。」

こんなことを娘が言う?これもフランス国民性でしょうか?奥さんが言うならまだしも、娘がお父さんに言うかなぁ・・・

で、夫はナタリーに

「実は好きな人ができた。別れてほしい」

あっけにとられるナタリー。すっかり安心していた夫婦の関係が、結婚25年目にしてまさかこんな簡単に終わるとは・・・・

あれ?なんか聞いたことない?そのセリフ、そっくり俺と同じじゃないか?しかも俺、結婚24年目だったし。(笑)その後のナタリーの行動。よくわかります。夫は、もう他人になってます。切り替わり早いです。「はい、荷物まとめて出て行って。残念なのは、あなたのブルターニュの別荘に行けなくなること。あの海辺の別荘は好きだったし、あそこの庭は私が手入れして作ったのよ。新しい奥さんは庭の手入れができる人だといいけどね。」こういう皮肉たっぷりで言うところがいかにもフランス人っぽい気がする。

ナタリーには認知症になってる母親がいて・・・・独り暮らしで別居してるんだなぁ。これ放っておいていいのかと思うけど・・・・パンドラって名前の猫を飼ってて・・・・ナタリーは猫アレルギーだからパンドラを邪険に扱う・・・・「さっさとどこかに隠れなさい」って感じで。夜中にも電話をかけてくる母親にほとほと困っていて・・・・そのうちガス自殺を試みようとまでし始めたので、施設に入れることにして・・・・仕方なくパンドラをナタリーが引き取ることになります。

ある時、ナタリーの教え子のファビアンが遊びに来て歓迎するからと言うので、電車に乗って訪ねてみたら、仲間たちとアルプスの中腹の山荘で、思想家たちと行動を起こそうと語り合っている。どういう思想なのよって感じで・・・・ドイツの奴らだ・・・・映画はほとんどはフランス語で会話されてますが、突然ここでドイツ語が加わります。あの、私、第2外国語はドイツ語を専攻して、単位も取りましたが、全然わかりません。(笑)未だに暗号のようです。

フランス人のナタリーがいきなりフランス語なまりの英語を話し始めます。ドイツ人も変な発音の英語を話してコミュニケーションする。ヨーロッパ人はこうして会話するんですね。当たり前ですけど。中国語にしてくれないかな?世界中に中国人いるし、中国語を話す人口は、たぶん英語を話す人口よりも多いはず。なんて思ったりしてね。

・・・・そんな感じで若い人たちは自由に生きているのね・・・とナタリーは思ったのでしょう。

それまで教科書にも採用されていた彼女の論文だったかな・・・・それが採用されなくなり、表紙も垢抜けた哲学書になってしまうことに不満を持ちながらも時代の移ろいを突きつけられたような感じを受けます。

そうこうしているうちに、施設にいるお母さんの容態が悪くなって、あっさり他界してしまいます。ナタリーの態度的にはお母さんのことはあまり好きじゃなかったのか・・・・・母を亡くした寂しさから、ファビアンを訪ね・・・・・彼女がいることも知ってますので、ナタリーがファビアンに対して抱いていたのは、恋心ではなく、自分の思想を理解してくれる理解者・・・・・だったと思います。若くてイケメンですけどね。2人の間に変な関係の描写は全くありません。いや、挨拶のハグの中にあったのかなぁ。

慰めてもらおうと訪ねたのに、ファビアンは彼女との間に子供ができ、山小屋で生活するために、より現実的な世界に直面していて・・・かつてのようにアナーキースト的な思想を語り合うファビアンではなくなっていた。さらにファビアンからナタリーの思想と行動が一致していない、革命を起こすところまでいかないという甘さを指摘される。「自分の頭で考える人間になりなさい」そう教えて来た自分の教え子が、いつの間にか自分の頭で考え、ナタリーとは違う思想を持っていたことに衝撃を受け、それまで毅然としてた彼女が、1カットだけベッドで泣くというところに、女性の弱さを感じました。

帰りの電車で、街を歩く別れた夫と、彼女らしき若い女性が歩いているのを目撃して、またあきれてしまう。あんな小娘に夫を取られた・・・そんな感じでしょうか?猫のパンドラもファビアンにゆずり・・・・部屋にはナタリーひとり。夫もいないし自由は手に入った。ひとり部屋に帰る・・・・ぽっかり空いたような感じでしょうか。

クリスマス・・・・別れた夫が訪ねてきた。本を取りに来たんだったかな。若い恋人は実家に帰ったと言ってたかな。子供と孫が来るし、料理の準備をするからもう帰って・・・・と追い返すナタリーの強さ。(笑)すごすごと孫の顔も見られず帰る元夫。クリスマスは子供と孫が来て一緒に過ごせる・・・・・そんな中に彼女は幸福を見つけたのでしょう。

「幸福を手にいれる前が幸福なのです」

そう教えてた彼女の言葉がぴったりなシーン。夫を失い、母を失い、認められていると思ってた自分の思想も失い、教え子も変わってしまった・・・・・でも1人でも生きていける・・・・バツイチ女性に勇気を与えるような映画です。日本人とフランス人の考え方の違いは感じましたが、なかなか面白い映画でした。スクリーンを通してパリにいたような・・・・そんな感じになりました。



CGも一切ないし、登場人物も少ない。制作費何十億もかけなくても面白い映画は作れるという見本のような映画でした。総合評価は80点。

東座はこういう感じの映画を選んで上映してるんだなぁ。ファンが多いわけです。来月の映画が楽しみですね。

この記事へのコメント

2017年06月13日 08:06
あんな小娘に夫を取られた・・・というより、「元夫はあんなのがいいと思っているのかい。あほくさ!」というように取れますねぇ。自分と小娘を元夫という人間に比べていただくのではなく、元夫がその程度の人間だとわかったと目が覚めたというか。だから未練も何もなし、本を取りに来ても帰ってくれというのは、フツーです。(笑)
けいつ~
2017年06月13日 22:31
>櫻弁当さん
なるほど。あんなのがいいと思ってるのかい。あほくさ・・・・女子としてはそう思うんですね。もしも私が逆の立場、元カミさんが若い男といっしょ、もしくは年配のオヤジと一緒だったら・・・・うーん、やっぱりあんなのに取られたと思ってしまいますね。あんなのがいいのか?とは思わないですね。なんでだろ?
櫻弁当
2017年06月14日 06:38
だって、世の中には若い人、見栄えのする人、お金持ちとか物質的に豊かな人はいくらでもいるものです。そういう人とちょっと交流があって舞い上がるのは、新しいおもちゃが面白いというのと同じような子供っぽい感情です。そのうちにまた別のおもちゃが現れることでしょう。
映画の元夫は、小娘にのめり込んで家庭まで壊すに至るということは、そこんところをはっきり見極めてないと思うのです。
けいつ~
2017年06月14日 09:10
>櫻弁当さん
おぉ、さすが深いですねぇ。映画の中の元夫は、娘から奥さんを取るか、恋人を取るかの選択を迫られて、恋人を取ってしまいましたからねぇ。浮気を謝って奥さんを取るという選択もあったんですけどね。新しいおもちゃを選んでしまいました。男は何歳になっても子供みたいなもんです。
ねぇ、達さん?(笑)
けいつ~
2017年06月14日 09:12
そうか、それで次から次へと新しいおもちゃが現れるのか。なるほど。
Carrie
2017年06月24日 20:35
お話聞いてるとなんか悲しい・・
私ね、「True Love」っていう曲大好きなの。けいつ~さんは?
去って行った男性は追わないけど寂しいなぁ・・
けいつ~
2017年06月24日 21:07
>Carrieさん
うーむ、悲しいと思うか、思わないかは人それぞれなんでしょうねぇ。何が正解で、何が不正解はない問題です。
true loveという曲はちょっと知りませんが・・・・誰の歌でしたっけ?

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